沈まぬ太陽

沈まぬ太陽

原作=山崎豊子


渡辺謙
三浦友和
石坂浩二



2009-11-03.jpg




(感想)

日航ジャンボ墜落事故を思い起こさずにはいられない冒頭の
エピソード。
中村倫也が父の遺体を確認するために体育館に訪れ、そこで
父が墜落直前に家族へあてたメモ書きを
中村倫也が読む。
涙が溢れて止まらなかった。


今でもあの事故は鮮やかによみがえり、自分のことのように痛ましい思いで
一杯になる。
映画には出てこないが実際の機長と副機長の逼迫したやり取りも覚えている。
「もうだめからもわからんね」
最後まで必死で、何とか機体を立て直そうとした機長の絶望的な一言・・・。
今でもはっきり覚えている。


しかしこの物語は日航機事故(映画では国民航空)が
メインではないのだ。

主人公恩地(渡辺謙)の、大企業における生き方、人生を壮大なスケールで
描いた物語であって、事故はその一部でしかない。
それはそれで全体的に力のある、見ごたえのある作品であった。
だけれど、私にとってはそれが物足りなかった。
あの事故は、そういうエピソードの一つとして終わらせるようなものではないと
自分は思うからだ。

あの事故を入れるとしたら、やはりそれがモチーフになるべきではないか。
あの事故の原因を、主人公たちが追及していく。
そういう姿を見たかった。
突き詰めればアメリカに行きつく。
だから描けなかったのか、描くつもりもなかったのか、わからないが
この作品に対する不満がそこなのだ。

三時間二十二分、全く飽きることなく一気に観ることができたから
作品としての力はあると思う。
渡辺謙、石坂浩二は存在感があってとても良かった。

私はドラマ(全20回)の方を以前に見ていたので、
内容が把握できていた。
ドラマならではの詳細な映像化で、恩地が組合長になるところから描かれていて
その過程がわかりやすく、感情移入もしやすかった。
同じように組合員として恩地を助けていた親友の行天の
心理の移り変わりも、ドラマ版の方がよく描けていた。
映画は3時間を超える大作とはいえ、やはりある程度は端折らなくてはならず、
どうしてもダイジェスト版のようになってしまうのは仕方がないとはいえ残念だ。
もう少し脚色を考えればできないことではなかったかもしれない。
しかし、映画のキャステイングはドラマよりも良かった。
さすが映画、というスケール感のある役者がそろった。

ドラマ版では恩地に上川隆也、行天は渡部篤郎で
それぞれ役に合ってはいるが、小物感がある。

映画の石坂浩二が良かった。
国民航空を立て直すために総理自らの頼みで
会長として就任するのだが、真摯に会社の改革を、恩地と共に
やり遂げようとする姿がリアリティがあってよかった。

そんな一途な思いで努力したにもかかわらず、
総理らは後になって保身のため、翻して
会長辞任を迫る。

志半ばで去らねばならず、恩地も最後には結局
またナイロビへ飛ばされるのだが、
行天もまた、かつて冷遇しスパイのように便利使いした部下に
最後の復讐にあい、転落するだろうというところで終わっている。



山崎豊子の作品の持つ力が、映画化にあたってもある程度の
レベルの作品に押し上げている。

「白い巨塔」
「ぼんち」
「不毛地帯」
「華麗なる一族」
など、面白い作品を多く残してくれた。

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